プロ野球における”人的補償”とは何か。
日本のプロ野球では、
FA宣言をした選手のうち、
AランクまたはBランクの選手を獲得した場合、
相手球団(獲得したFA宣言の選手が元々所属していた球団)に対し、
人的補償を行う必要があります。
この”人的補償”について、
どのようなルールなのか、対象外の選手はいるのかどうか、
拒否をすることはできるのかどうか、などなど
詳しく、各ポイントを分かりやすく解説していきます。
FA宣言の選手を獲得すると、相手に選手を1名渡す必要がある
人的補償とは、簡単に言うと、
”FA宣言をした選手を獲得した際に、相手球団に自分のチームの選手を
代わりに1人、あげること”を示します。
FA宣言した選手を”取られた側”の球団の戦力が落ちてしまうことや
特定のチームに戦力が集中してしまうことなどを防ぐことから
導入されているシステムで、
FA宣言をした選手のうちAランクかBランク(ランクについては↓で説明します)の
選手を獲得すると、
相手の球団に対して、自分のチームから選手を1名、移籍させないといけない、
というルールになっています。
”人的補償”として移籍する選手は相手チームが選ぶことになり、
FA宣言した選手を獲得した球団側にとっては
ある意味ではリスクとなり、
時々、予想外の選手を人的補償として相手球団に取られてしまうような
事例も、これまでには起きています。
ただ、相手球団も”全ての選手から選べる”わけではなく、
条件もあります。
この点についても、それぞれ↓で解説していきます。
「ランク」とは?CランクのFA選手を獲得しても補償は発生しない
FA宣言をした選手には”ランク”付けが行われて
「Aランク」「Bランク」「Cランク」の三段階に分かれます。
このうち、AランクとBランクの選手を獲得した場合、
”人的補償”が発生しますが
Cランクの選手を獲得した場合は人的補償は発生せず、
獲得した側の球団は、特に何も失うものはありません。
このランク付けは、
相手球団の選手の”年俸”で決定し、
相手球団の中の選手の年俸で見て、
上位三人の選手がAランク、4位~10位の選手がBランク、
11位より下の選手はCランクとなります。
そのため、FA宣言した選手が
その球団の選手で年俸が5番目に高い選手だった場合は
獲得すれば人的補償が発生、
逆に、上から数えて年俸が14番目の選手だった場合は
Cランクになるので、人的補償は発生しない、ということですね。
基準は”金額”というよりも、
”その球団内での年俸の高さの順番”になるので、
例えばFA宣言した選手が
年俸1億円でも、億越えの選手が多く所属している球団なら
その選手はCランクの可能性(人的補償なし)もありますし、
FA宣言した選手が、
年俸8000万円でも、全体的に年俸の高い選手が少ない球団の選手なら、
Bランクで人的補償が発生するような可能性もあります。
”プロテクト”で、人的補償での流出を防げる
AランクまたはBランクのFA宣言選手を獲得した場合は、
その選手が元々所属していた球団に”人的補償”として
選手を1名、渡す必要があります。
ただ、全ての選手から選択、ということになってしまうと、
エース級やスタープレイヤー、期待の新人なども持って行かれて
しまう可能性が出てしまうため、
そうなるとFA宣言した選手(AランクとBランク)を獲得する球団は
激減してしまうために、
対象選手の中から”28名”はプロテクトと呼ばれるものを
することができます。
人的補償を渡す側の球団が”この選手は渡せませんよ”という
選手を28名選択できる、ということですね。
この28名の選手は人的補償を獲得する側の球団
(FA宣言した選手が元々所属していた球団)は
獲得することができません。
そのため、FA選手を獲得した後には、
球団側が”この選手は渡したくない”という選手を
対象の中から28名、選択することになります。
ただ、28名だと意外と有望な選手や
ベテランの中にも”プロテクトを外れる選手”がいて、時折、
球団にとってダメージとなる選択を相手球団にされて、
人的補償として差し出すことになる場合もあります。
人的補償選択の対象外の選手
FA宣言した選手を取られた側の球団は
前述したプロテクトのリストを受け取ったあとに
人的補償で獲得する選手を選択します。
その際に、獲得の対象外となるのは、
・プロテクトリストに記載された選手(28名)
・育成選手(人的補償は支配下選手のみ対象)
・外国人選手
・ドラフトで獲得したばかりの選手
と、なります。
これらの選手は人的補償の対象としては
選択できず、それ以外の選手の中から一人を選び、
獲得することになります。
金銭での補償を選択することも可能
人的補償を獲得する側の球団は
”金銭”での補償を選択することも可能になっており、
選手を獲得しないという選択をすることもできます。
お目当ての選手があまりいなかったりする場合には
人的補償ではなく、金銭補償で済ませる選択を
する場合もある、ということですね。
大体の場合は人的補償を選択できる球団は
人的補償を選択する場合がほとんどですが、
必ずしもそうとは限らず、
金銭補償を選択することもできる、
という形になります。
FA宣言した選手を獲得した側は、
相手球団が”金銭補償”の方を選んだ場合には
選手を一人も失うことなく、そのままFA関連の流れは
終了することになります。
人的補償を拒否することはできるの?
人的補償で選ばれた選手は
本人の意思に関係なく移籍するのが
基本的なルールとなっているため、
人的補償を拒否することは基本的には出来ません。
拒否した場合にはその選手が資格停止処分などを
受けることになるために、
多くの選手は、人的補償での移籍が不本意なもので
あったとしても、相手球団に移籍する、
というのがルールになっています。
ただ、ごく一部例外として、
移籍するぐらいなら引退するという動きを見せたりするなどで、
事実上、人的補償を拒むような動きがあったことも
これまでの歴史の中では存在しています。
基本的に”嫌々でも移籍するもの”ですが
中にはそうならない場合も例外的には存在している、ということですね。
(ただ、ほとんどの場合は選ばれた選手は移籍しています)
プロテクトリストは一般公開されるの?
FA宣言した選手を獲得し、
人的補償で選手を渡す側になった球団が提出する
”プロテクトリスト”(人的補償の対象外にしたい28名)は、
公開されるのかどうか。
この答えはNoで、プロテクトリストが外に漏れることは
ありません。
スポーツ新聞などが情報を手に入れて載せることもありませんし、
選手間も基本的には知らされず、
関係者のみが知る情報となります。
そのため、分かるのは最終的に”人的補償で獲得された選手は
プロテクトされていなかった”というだけで、
他の選手がプロテクトされていたのか、されていなかったのか、
という点に関しては外部の人間が知る方法はありません。
情報が漏れたようなケースも基本的にないため、
情報管理が徹底されている、と言えます。
まとめ
FA宣言した選手を獲得した際の
人的補償について解説しました。
色々とルールはありますが、
人的補償自体も、
FA宣言した選手を獲得する際の
獲得する側の球団にとっては、
リスクとなる部分の一つになりますね。
その部分も含めて、
各球団はFA宣言をした選手を
獲得するか、あるいは見送るか、ということを
考えていくことになります。
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